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かまわぬ手帖 vol.14 〈工場見学〉おいしい風呂敷ができるまで

かまわぬの小風呂敷シリーズ『おいしい風呂敷』が今年、デビュー10年!
たくさんの方にご愛用いただいているこの風呂敷もまた、特別な染色法で作られています。

「手捺染(てなっせん)」という技法で染色している、風呂敷の生地を作る工場見学の様子をレポート。“おいしくてかわいい” 風呂敷が出来るまでを紐解いてまいりましょう。


「手捺染」とは伝統工芸品にもよく用いられる技法で、手作業で丁寧に染め上げることから、このような名前が付けられています。始まりは古く、江戸時代(西暦1700年頃)に広まった「友禅染め」が元になっています。
明治時代に入ると型紙と化学染料を用いた「型友禅」が発展。さらに型紙が「シルクスクリーン型」へと移り変わり、現在の染めの方法が確立されました。

<型>
デザインを「色ごと」に分けて、スクリーン型を作成。昔は絹糸をメッシュとして使用していたので「シルク」という名前が付いていますが、現在はポリエステル・ナイロン・ステンレスなどがメッシュの素材として使われています。

ひとつの枠の中に、おいしい風呂敷4枚分の柄が入っています
「もも」の本体を染める型紙
背景を染める型紙

<マス見本>
出来上がった型を使い、調合した色で試し刷りをします。製品同様の染色・洗い・蒸し・乾燥の工程を経て、色の確認を行います。

染料の調合はレシピが決まっていますが、気候やわずかな配合の違いでも色は変わってしまうため、調整には職人の経験や知識が活かされています。

調合した染料
マス見本には蒸し器のミニチュア版を使用
「もも」のマス見本。Bの桃は少し青みがありクールな印象に。Aに決定!

ここからは<染め>についてお話します。
工場には25mの捺染台が4台並んでおり、100mを1ロットとして染め作業を行います。
注染とは異なり、生地を全て広げ1型ずつ柄付けをしていきます。

<生地張り>
25mの捺染台が4台並んでおり、100mを1ロットとして染め作業を行います。
染め台には粘着性があり、生地にシワが出来ないよう丁寧に張っていきます。

<染め>
シルクスクリーン型を使い、職人がスキージ(大きなヘラ)で1パネル分ずつ染料を付けます。1台25m×台数分を一度に染めていく、大変集中力のいる作業です。

また1色につき1枚の型紙が必要で、1色ずつ染め→乾燥→染めを繰り返していきます。
作業中の「たまねぎ」は淡い色を先に染め、次に背景になる青色を重ねていきます。柄をぴったりと同じ位置に重ねるのは至難の業です。

<乾燥>
染め上がった生地を捺染台からはがし、天井に吊るして乾燥させます。

<蒸し>
生地を高温の蒸気の中に通す蒸し加工を行います。
蒸すことによって、染料を生地に定着させ、発色も良くなります。

<洗い>
水洗いで余分な染料を落とし、ソーピング(洗剤)で生地を洗い、より発色を高めていきます。

<仕上げ>
乾燥後、整理加工で真っすぐに整えたり風合いを良くする加工を施します。
染めに不良がないか検反して、生地の完成です。

染め上がった生地を裁断・縫製して、ようやく『おいしい風呂敷』の出来上がり!
注染とは異なる技法ですが、こちらも大変な手間をかけて作られています。

かまわぬの風呂敷の染め方は「友禅浸透染め」とも呼ばれるもので、染料が生地に浸透し<裏表>の差が目立ちません。通常よりも時間を要する染め方には、熟練した職人の技が光ります。

工場見学、お楽しみいただけましたでしょうか?

おいしい風呂敷も10年目を迎え、長きにわたりご愛顧いただき誠にありがとうございます。
これからも皆さまのお弁当時間をより楽しく、彩り豊かになるようなモノづくりを目指してまいります。

次回、更新予定は6月5日(月)です。