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てぬぐいはアウトドアの大きな味方。 必要最小限の荷物で山旅へ

登山やキャンプなど、アウトドアで実は便利なアイテム、てぬぐい。
汗を拭くだけではない使い方、外遊びでも選ばれる理由を、
10年以上国内外の山に親しむ「and wander」デザイナー森美穂子さんが教えてくれました。

友人に連れて行ってもらったことをきっかけに登山にはまり、10年以上という、アウトドアウェアブランド「and wander」デザイナーの森美穂子さん。日帰りで楽しむ南アルプスや八ヶ岳から、数日かけて歩くアメリカのジョン・ミューア・トレイルやビック・ベンド国立公園、フランスのツール・ド・モンブランなど国内外の山々で自然を満喫しています。

数日間にわたる登山では、ザックに、着替えや水、食糧、テント、寝袋など、山での衣食住を詰め込んで、それを背負って歩かなければなりません。
「私が背負える荷物の上限は13キロくらい。道中、水場や売店がいっさいないことも多く、必要な水や食糧を減らすわけにはいきません。その分、ウェアや道具は少しでも軽くしたい。軽くした分、歩くのが楽になるし、カメラやスケッチブック、ペンなど自分の好きなものを入れられる。荷物が軽いと、自分らしい山歩きができる余裕を生むんです。」

日帰りにしても数日間の登山にしても、快適に歩くために荷物をできるだけ軽くする。必要性がそこまでないものは持っていかないだけでなく、ウェアや道具・ギア自体が軽いものを選ぶ人が増えているそう。アウトドア、特に長い距離を歩く登山では、荷物を軽くコンパクトにまとめることは絶対ともいえるセオリーなんだとか。

「登山というと頂上を目指すストイックなもののイメージがありますが、そうではなく、自然のなかをじっくり歩いて山を楽しむのが好きなんです」(森さん)。どんなに忙しくても年に一度は長期休みをとり、海外のロングトレイルを歩くようにしている。
2019年夏には、カリフォルニア州北ヨセミテへ。巨大な花崗岩の岩壁あり、川や湖ありと、美しいトレイルを6日間かけて歩いた。

天候が変わりやすい野外の環境では、ウェアの素材は短時間で乾くことが大切。汗をかいたり雨に濡れたりすると不快なうえ、体が冷えて低体温症をまねきかねない、というのがその理由です。「and wander」 でも、ウエアや道具を軽量化、速乾性を持たせるための素材開発、デザイン・縫製に余念がありません。

例えばザック。ヨットのセールなどに使用されることもある、高い防水性と引裂強度があるダイニーマコンポジットファブリックという超軽量素材を用いています。カバーやポケットを減らし、できるだけシンプルなデザインにすることで、背負っていることを忘れているほどの軽さにしているとか。
以前なら、重い荷物を背負ったら安定性を保つために、靴も革のハイカットシューズなど重量のあるものが選ばれていましたが、今では、軽快なローカットのハイキングシューズでも歩けるように。防水、透湿、耐摩耗性に優れた素材GORE-TEX®メンブレンをもちい、水に強く丈夫というから、ここ数年の進化というのはすごいもの。
ウインドブレーカーやパンツに使われているのは、パーテックスという素材。
どれも軽さ、枝や岩にひっかかってもやぶれない丈夫さ、速乾性を合わせ持つ最新の研究のすえ生まれた素材です。

これらはすべて森さんの愛用品。「実際に身につけて、雨風のなかを歩いたり岩場を乗り越えたり、体を通じて気がつくことがたくさんあって、それをまたデザインや素材に落とし込んでいるんです。」

そんな最新素材や機能性が重宝され、進化を続けるアウトドアウェアとギア。その一方で、多くの登山好きに愛され続けているのが、てぬぐい。
「and wander」 のショップでも、さまざまな柄のてぬぐいが販売されていました。その用途は汗をふくのはもちろん、その長さを利用して首に巻いたり頭からかぶったりと日除けに。森さんも、山小屋泊のときにてぬぐいを枕カバーがわりにしたり、下山後、温泉に入ったタオルとして重宝している、と話してくれました。
「てぬぐいは端が切りっぱなしで、四隅に水がたまらず、すぐに乾くんです。」
タオルはどんなに薄いものでもかさばるけれど、てぬぐいはコンパクトで吸水性が高い上、その形状から綿でもすぐに乾くのが大きな魅力だそうです。

森さん愛用のてぬぐいは、かまわぬ浅草店で山をテーマにしたイベントを開催したときにご購入くださったもの。山好きのイラストレーター落合恵さんによってさまざまな山のモチーフが描かれています。

「5年以上経ってクタクタになって色あせてきていますが、そのくったり感が気持ちいい。今でも愛用しています」

ハードな自然環境下だけでなく、キャンプやマラソンなどアウトドアのさまざまなシーンでも使えるため、友人へのお土産として、てぬぐいを購入することもあるそうです。
「山小屋では各小屋オリジナルのてぬぐいが販売されていて、柄も個性的なものが多いんです。値段もそこまで高くないし、山域や小屋ごとの柄を集める楽しみがあります。」
軽くて、便利で、すぐ乾く。機能性以外にも、つい集めて眺めたくなる柄がある。
「小さい面積にいろいろと詰まっている。それが、てぬぐいの魅力なんだと思います」(森さん)

森美穂子さん
「and wander」デザイナー、執行役員。コレクションブランドのデザインチームに所属し、2004年よりフリーランスで活動。山好きがこうじて、2011年に同僚だった池内啓太氏とともにアウトドアウェアブランド「and wander」をスタート。夏は国内外の山々、ロングトレイルを歩き、冬にはスキーを楽しむアウトドア派。

企画・プロデュース 矢口愛子(NON-GRID.Inc)
撮影 山本康平
取材 柳澤智子