季節のおすすめ

今だから「ありがとう」をギフトとともに伝えたい。

お歳暮や年賀状といった挨拶が簡素化されていくけれど、人と人とのつながりを振り返り、感謝を伝えることで一年を気持ちよく締めくくりたいもの。
そこで、人づきあいを大切にし、関連著書を多数出版されている後藤由紀子さんに、この時期ならではの「ありがとうの伝え方」をうかがいました。

気負わない価格で購入できるてぬぐいは、贈る方ももらう方もうれしいギフト。年末年始には赤い和紙に白いこよりで包んで、おめでたさを感じるラッピングに。
沼津の雑貨店「hal」の店主であり、さりげなくもセンスの良い暮らし方で全国にファンを持つ後藤由紀子さん。

「昔から贈り物をするのが好きなんです。これ、おいしいから食べてみて!ってお裾分けしたり、おもしろい、いいな、って思ったものを差し上げたりと、いつもカバンの中にミニギフトをいくつか忍ばせているんです」と話す後藤さん。そんな贈り物好きの血が一番騒ぐのは、年末年始。10月に入ると、カタログやお店でギフトを探し始める、というほどの贈り物マスターです。
お礼を伝えたい相手は、沼津で営む雑貨店の取引先や、自著の出版に関わってくれたスタッフ、親戚、友人。あの人やこの人の顔と名前を覆い浮かべながら喜んでいただけそうなものを探すそうです。

そんな後藤さんが身近な友人に贈って喜ばれるというのが、てぬぐい。
ご自身もてぬぐい愛用者で、使い勝手のよさをよくよく知っているから、
お礼の言葉とともにてぬぐいを添えるとか。
「年末は、特に友人や近しい仕事仲間に会う機会が増える時期。いつもありがとうね!と、赤い和紙でラッピングしたてぬぐいを直接手渡ししています。」

後藤さんが営む雑貨店「hal」で取り扱いしている、39の数字入りのてぬぐい。ラッピングするときは39が見えるようにするのがポイント。
日本的なもの、和のものを好む友人には、白いシルクの靴下に、銀鼠色の「組格子」てぬぐいでシックなコーディネートに。

後藤さんが最近「これはやってみたい」と考えているのが、中身が見えるてぬぐい用封筒を使い、てぬぐいを郵便で送ること。「てぬぐいと封筒が一緒に売っているそうなんです。これがポストに届いていたらうれしいですよね。シックな紺色の封筒に、かまわぬのロゴがさりげなくプリントされていて素敵です。」

かまわぬで現在販売中の「てぬぐい封筒」。てぬぐい1枚を封筒に入れた場合、120円分の郵便代で郵送できる。カードを同封する場合は、140円分の郵便代に。貼る切手も相手の好みに沿った記念切手を組み合わせて選ぶとか。

年末年始の休暇があるこの季節ならではの贈り物として、入浴剤やワイン、お酒も喜ばれることが多い定番です。
「贈る先が人数の多いご部署の場合、ゆっくりお風呂に入って疲れをとってくださいね、という気持ちから個別包装になった入浴剤を送ります。個別包装なら分けていただけますし、いろんな香り、効能を持つ入浴剤をセットにしておけば、自由に選んでもらう楽しみもありますよね。」

旅行好きの友人夫婦にも、好みの入浴剤とてぬぐいをセットにした「家で温泉気分セット」を贈ろうと考え中。なかなか旅行に行けないこの年末だからこそ贈りたい、家での時間をより充実させる遊び心あるギフトです。

また、およばれしたホームパーティには、ワインや日本酒を持参します。「てぬぐいを1枚添えてクロスがわりに使っていただきます。もみの木、雪、ポインセチア、柊などクリスマスを感じさせるモチーフを選べば、食卓が華やかになりますよ。」

年末年始の自宅でのお風呂の時間を有意義に、という入浴剤をてぬぐいをセットにしたギフト。新春を意識して選んだてぬぐいの柄は、梅とアスパラガス。ひとあし先の季節の柄を選ぶのは、季節のうつろいを大切にしてきた日本人らしい美意識。
おもてなしをしてくれるホストの手間を減らすように、手土産の花は花瓶がいらないスワッグを選ぶのがささやかな心くばり。また、マイバッグとしてあけびかごに入れて持っていけばゴミになりうる紙袋、ビニル袋などを増やすこともない。

なかなか大切な人々と直接会いづらい世の中だからこそ、相手の好みやライフスタイルを理解したうえでの贈り物ほど喜ばれるものはない、と後藤さん。
「花が好きな友人には冬の植物モチーフを選んだり、食卓や場がはなやぐ行事やイベントの柄を選んだり。色・柄に隠された個性があり、これまで培われた日本人の粋があり、季節感がある。その選び方、楽しみ方には限りがありません。」

てぬぐいというのは、いうなれば1枚の布。そこに描かれるのは小さな世界です。ですが、こんなに多くの喜び、楽しみがあることを後藤さんが教えてくれました。

後藤由紀子さん
静岡・沼津で、2003年から器と生活雑貨の店「hal(ハル)」を営む。等身大の暮らしぶりにファンが多く、『おとな時間を重ねる』『会いたい。東京の大切な人 私の愛するお店』(扶桑社)『50歳からの暮らしの整え方』(大和書房)など著書多数。新刊『毎日のこと、こう考えればだいじょうぶ。』(PHP研究所)が発売中。

企画・プロデュース 矢口愛子(NON-GRID)
撮影 山本康平
取材 柳澤智子
スタイリング 國松遥