冬が近づき、新しい年を迎える準備を始める頃になりました。
年末年始の行事には、日本古来の伝統や風習があります。今回は行事に込められた意味由来について学んでみましょう。
【熊手】
商売繫盛の象徴とされる熊手がずらりと立ち並ぶ「酉の市」は、11月の酉の日に開かれています。
酉の市のはじまりは江戸時代。豊穣を祝う収穫祭でしたが、酉の市の「とり」が「取る」につながり縁起が良いとして、商人たちが願掛けをする大きな例祭になりました。
商売繁盛の縁起物として親しまれる「熊手」は、落ち葉を「かき寄せる」使いみちにあやかって「福を搔き集める」として幸運や金運など福を書き寄せる縁起物とされ、今に受け継がれていています。
熊手の中央に福を招く「お多福」、まわりには鯛(めでたい)や鶴亀、五穀豊穣を祝う米俵などの縁起物が所狭しと飾り付けられています。また熊手は年々大きいものに買い替えていくと良いとの言い伝えもあります。
熊手は玄関に向けて、できるだけ高く飾るのが良いそうです。「かっこめ」と呼ばれる手のひらサイズの熊手もありますので、ご自宅に飾って福を呼び込んでみませんか。
【煤払い】
年末の大掃除はもともと、煤払い(すすはらい)という年中行事から始まりました。
煤払いの歴史は古く、平安時代の宮中行事だったと言われています。宮中を掃除するだけではなく「厄払い」の意味が込められていました。
室町時代に入り神社仏閣を清める行事として広まり、年神様(としがみさま)やご先祖様をお迎えするために煤払いが行われるようになります。
12月13日に行われる煤払いは「正月事始め(ことはじめ)」とも呼ばれ、掃除をして年神様をお迎えする、お正月準備のはじめでもあります。
掃除に欠かせないのが「手ぬぐい」。頭にかぶってほこり除けに。また古くなった手ぬぐいは雑巾にして一年の汚れを落とします。穴が開いたり破れてきりしたら裂いて棒に括り付け、最後は「はたき」にして使い切りましょう。
【年末年始のご挨拶】
今も交わされる「年末年始のご挨拶」。平安時代頃から年の初めにお世話になった人や親戚の家をまわって挨拶をする「年始回り」が元になったとされ大正時代あたりまで続きます。
江戸時代に入ると人々の付き合いが広くなり、新年を祝う書状で挨拶を済ませることが増えていきました。これが「年賀状」のルーツになっています。
「お歳暮」の起源は元来「年の暮れ」を表す言葉でした。室町時代に行われていた、お正月にご先祖様を迎える「御霊(みたま)祭り」という行事が起源とされています。
今では「今年も一年お世話になりました」という気持ちを込めて、品物を贈ります。
お正月のご挨拶にもっていく手土産が「お年賀」です。年始から松の内(1月7日頃)までに訪問して手渡しをします。お年賀は「今年もお世話になります」という未来に対する気持ちを伝えるために贈ります。
手ぬぐいは、気軽に気持ちを伝えられる贈り物のひとつです。のし紙を掛けて、年末年始のご挨拶をいたしましょう。
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名前染めてぬぐい
【冬至】
冬至は二十四節気のひとつ。一年のうち太陽の出ている時間が一番短く、最も夜が長い日です。冬至の翌日からは再び日が長くなることから「太陽が生まれ変わる日」として、この日から新年が始まるとされていました。
冬至に食べられる「かぼちゃ」。黄色は魔除けの色であり栄養価も高いことから、かぼちゃを食べて無病息災を祈ったと言われています。
冬至は上昇運に転じる大事な日のため「ゆず湯」で身を清め邪気を祓うという意味があります。冬至=湯治、ゆず=融通に掛けて「ゆず湯に入って息災であれば、融通が利いてうまくいく」という洒落が江戸っ子に受け、冬至にゆず湯が広まっていきました。
また、ゆずには実るまでに長い年月がかかるため、長年の苦労が実りますようにとの意味も込められています。
【お正月飾り】
お正月は「年神様」という新年の神様をお迎えする行事です。年神様が訪れるための目印がお正月飾りです。
●門松
門松飾りは、年神様が家に訪ね入るにあたっての目印とされています。葉が落ちない松、成長の早い竹、春に先駆けて咲く梅と、三つの縁起物を用いています。
●しめ飾り
「しめ縄」には神様をまつる神聖な場所という意味があり、中に不浄なものが入らないようにする役割もあります。
しめ縄に紙垂やウラジロなどの縁起物を付けたものが「しめ飾り」です。しめ飾りで結界をつくることで、その内側が清らかな場所となり、厄除けにもなります。
地域によっては、1月15日ごろの小正月に「どんど焼き」が行われ、お飾りや縁起物のお焚き上げをしたり、お餅を焼いて無病息災を願う行事が行われます。
お正月の風習には、新年を迎えられた喜びや新しい年が良い一年になるようにとの願いが込められています。季節の行事も、意味を知ることで楽しく過ごせそうですね。
次回、更新予定は12月5日(火)です。